和田真奈美 (大31期 英文)
皆さんはイタリアと聞いて、何を思い浮かべますか。太陽の国、古代遺跡、芸術、モード、風光明媚な景勝地…。それまで旅行で度々訪れていたとはいえ、北ヨーロッパの落ち着いた暮らしに馴染んでいた私にとって、イタリアのイメージは、陽気な国民性で旅行するには楽しいけれど、暮らすには何となく恐い国というものでした。それに、シエスタの習慣、おしゃべり好き、身振り手振り(口振り)な派手なこと等々、どちらかといえば典型的な日本人である私は、ヨーロッパ流の自己表現はそれなりに理解できても、イタリア式の強烈な自己主張には、少々違和感がありました。
1982年に南山大学を卒業し、コンピューター会社勤務を経て渡英した私は、美術の源流を知りたいという興味に任せ、ロンドン大学(東洋美術史)、サザビーズ(西洋美術史と宝飾美術史)、インチポールド校(室内装飾と家具調度品史)で学びました。パリでフランス語の勉強を始める前の数ヶ月間を、サザビーズ日本美術部で実習生として過ごしたことは、色々な意味で興味深くも貴重な体験でした。
1990年代初め、ヨーロッパではすでにIT革命が語られ、文化財デジタル化の取り組みが始まり、当地にいた私は、自然とこの分野にかかわるようになりました。現在、イタリアやヨーロッパのデジタル化を始めとする文化財保護事業に携わっています。南山大学の国際的な環境で学んだこと、カトリック教義に触れたことは、国際プロジェクトのように、様々な国の人たちとの共同作業において、人間関係を理解することの礎を築いてくれました。
永遠の都、ローマは奧行きの深い、刺激に満ちた町です。悠久の歴史の舞台にふさわしいモニュメントの数々。古代ローマの繁栄の上に花開いたバロック建築の作り出す壮麗で劇的な空間は、驚きの連続です。一方、近代的に舗装された道路の真ん中に、ぽつりと取り残された、朽ち果てた神殿の列柱、遺跡の一部が住居に取り込まれていたり。観光客のまだいない早朝のローマを、本を片手に散策することは、歴史好きの私にとって想像力の膨らむ楽しみの一つです。帰り道には買い物もすませてしまいます。朝市や食料品店は、早いところで4時には店を開けているのです。ローマは、夜が長いけれど、朝も早いのです。いったいどこでどう、つじつまを合わせているのでしょうか。真夏の太陽のように強烈な個性を放つイタリアですが、dolce vita、人生を楽しむことに情熱を傾けるエピキュリアンなイタリア人に良い面は学びつつ、自身のイタリア化を軌道修正している今日この頃です。
http://lci.die.unifi.it/Projects/ArtGallery
1997年より、ローマ在住