在バーレーン夏目大使は
山里キャンパス1回生

世界から注目を集めるアラブで、外交官として活躍する卒業生がいる。バーレーン王国の夏目高男特命全権大使である。このほど一時帰国した夏目大使は、母校で「最近の湾岸情勢」について講演、各紙で紹介された。
 夏目君は1968年3月、南山生第1号として外務省に入省した。昨年5月に南山OBの初の大使となった。40年前の1964年に英米科に入学した夏目君たちの17期生は、完成、移転したばかりの現在の山里キャンパスで最初の講義を受けた学生である。新しい職域に果敢に挑戦した草創期の卒業生を紹介する。
 夏目君は2年間働いて学資を貯め、入学した。在学中はESSに所属。家庭教師や国際会議のアテンダントなどのアルバイトを続けるかたわら、夏休みにはリースマンの「Lonely Crowd」やガルブレス、パッカードの著書を原書で読んだ。南山大は当時、全学生が哲学を必修科目とした。大学祭に学生が哲学の田中美知太郎博士を招いて講演会を開くなどまだ、アカデミックな空気がキャンパスにあった。夏目君は仲間たちと反マルキストで知られた西洋史担当の沢田昭夫先生(後に筑波大副学長)を顧問に迎えて「歴史学研究会」を立ち上げた。他大学の「歴研」と違って南山の歴研はイデオロギー色のないアカデミックなサークルで、カール・レービット、トインビーの著作などの輪読会を開いた。
 当時、法学部がなく、外交官試験の定番とされた高野雄一先生の国際法、岡義武先生の近代外交史などを読むなど法学関連科目は総て独学で、外務省語学研修員試験に臨み、合格した。
 バグダッド大やカイロ大に留学、チュニジア・ブルギバ言語学院や大英博物館中東室、アジア経済研究所、ワシントン大中東研究所などでアラビア語の研鑽、中東地域研究を重ねた。
 イラクで殉職した井ノ上正盛書記官は若手のアラビアスクール仲間で、現地赴任前の研修で一緒に仕事をした。神戸大大学院国際協力研究科教授時代の講義録をまとめて「シリア大統領アサドの中東外交」(明石書店)を上梓。日本がPLOの民族自決権を認めるか否かで注目された鈴木善幸総理とアラファト議長の首脳会談で通訳をしている。夏目君のアラビア語の力は省内約140人のアラビニストのなかでも十指に入るとされる。
 バーレーンの政情は安定し、湾岸協力理事会(GCC)の中で禁止事項が一番少ない。湾岸・イスラムの「金融センター」といわれ、隣国サウジとバーレーンとの関係を中国本土と香港のそれに例えられている。米国中央軍隷下の第5艦隊司令部がある。日本大使館には大使以下日本人職員10名、現地人職員22名が働く。夏目君は「イラク復興を視野に入れた湾岸の安全保障・政治・経済情勢の情報収集に力を入れ、日本とアラブとの友好親善に寄与したい」と話す。
文責 森 文雄 (大17期 英米)

バーレーンでの大使就任レセプション

神戸大学大学院国際協力研究科での講演